福祉施設
2012.07
愛知県
医療法人宏友会 老人保健施設 ゆうゆうの里
築16年になる老人保健施設の空調更新について、ダイキンエアテクノの省エネセミナーで相談しました。補助金が下り、工事費も運転費も抑えられ、利用者に迷惑をかけない改修計画を立ててもらえました。
医療法人宏友会 老人保健施設 ゆうゆうの里 事務長 竹内孝充氏 事務次長 谷奥明氏
愛知県半田市及び阿久比町で24の医療・介護施設を運営する医療法人宏友会では、平成23年、築16年になる老人保健施設「ゆうゆうの里」の空調設備の更新を、ダイキンエアテクノに依頼しました。空調設備の更新を実施した経緯と効果、およびダイキンエアテクノの評価を、事務長の竹内孝充氏(写真左)と事務次長の谷奥明氏(写真右)にうかがいました。
目次
医療法人宏友会について
愛知県半田市及び阿久比町で整形外科・内科、老人保健施設、訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、デイサービスセンター、グループホーム、小規模多機能ホームなど24施設を運営。昭和52年開院の竹内整形外科病院(現竹内整形外科・内科クリニック)を母体とし、昭和63年法人化。総職員数約500名。(平成24年7月現在)
老人保健施設 ゆうゆうの里について
半田市南大矢知町に平成8年開設。入所定員100名(2人部屋26室・4人部屋12室)、通所定員100名。
1.冷房時(7月)のガス使用量を75%、水道使用量を14%、電気使用量を9%削減
医療法人宏友会では今回、ダイキンエアテクノに何を依頼しましたか。
今回ダイキンエアテクノに依頼したのは、当法人が運営する老人保健施設の、空調設備の更新です。
空調設備を更新した建物は、鉄筋コンクリート造4階建て、延べ床面積3,952m2の、築16年になる本館です。ガス焚きの吸収式冷温水発生機とファンコイルによる全館セントラル式の空調を、高効率のヒートポンプ式空調に更新してもらいました。
あわせて、建物南側の窓ガラスへの、日射調整フィルムの貼り付けも依頼しました。
空調設備の更新と日射調整フィルムの貼り付けで、どのような効果が得られましたか。
直近7月の使用量を前年と比較すると、ガスの使用量が75%、水道の使用量が14%、電気の使用量が9%、それぞれ削減されました。
改修前 |
改修後 |
差 |
変化率 | ||
ガス |
使用量 |
8,734 m3
|
2,180 m3
|
▲6,554 m3
|
▲75.0%
|
料金 |
746,388円
|
311,161円
|
▲435,227円
|
▲58.3%
|
|
水道 |
使用量 |
1,555 m3
|
1,341 m3
|
▲214 m3
|
▲13.7%
|
料金 |
364,760円
|
314,425円
|
▲50,335円
|
▲13.8%
|
|
電気 |
使用量 |
50,813 kWh
|
46,301 kWh
|
▲4,512 kWh
|
▲8.9%
|
料金 |
882,338円
|
997,665円
|
115,327円
|
13.1%
|
|
水道光熱費計 |
1,993,486円
|
1,623,251円
|
▲370,235円
|
▲18.6%
|
ガス焚きの吸収式冷温水発生機による空調を、ヒートポンプ式の空調に切り替えたことにより、ガスと水道、特にガスの使用量が大幅に減りました。
冷房のエネルギー源をガスから電気に切り替えたにもかかわらず、電気の使用量はむしろ減りました。更新後の空調機が、きわめて高効率であるためと思われます。
7月の水道光熱費は、前年より370,235円、18.6%削減できました。
無駄な空調運転も減らせます。以前は全館セントラル式だったので、一部の部屋に空調を入れるために、全館の空調を運転する必要がありました。空調設備の更新後は、1フロアを4つに区切ったエリアごとに、空調の運転/停止を切り替えられるようになりました。
保守費用も、大幅に削減される見込みです。以前の吸収式の空調では、冷暖房の切り替えとメンテナンスを、年に2回業者に依頼しなければなりませんでした。設置後10年を超える頃から故障が増え、修理代もかさんでいました。新しいヒートポンプ式の空調に切り替えたことにより、これらの費用が不要になりました。
費用以外の面では、どのような効果がありましたか。
室温調整をきめ細かくできるようになりました。以前の空調は、冷暖房の切り替えも自由にできなかった上に、各部屋の設定も「高」「中」「低」の3段階しかありませんでした。更新後は、設定温度を1度刻みで調整できるようになりました。風向きの調整や、除湿のみの運転もできるようになりました。
2.認知症の発症・悪化を防ぐため、居室の印象が変わらないようにした
空調設備を更新するにあたり、気をつけたことはありますか。
居室の印象が、空調設備を更新する前後で変わらないように注意しました。高齢者は、環境が急変すると認知症を発症したり悪化させたりすることがあるからです。この点をダイキンエアテクノに伝えたところ、居室の室内機の吹き出し口の外観が、更新前と変わらないように工事してくれました。
空調更新前(左)と更新後(右)で印象が変わらない空調吹き出し口
3.省エネセミナーで更新予算の確保について相談
空調設備の更新を、いつ頃から検討していましたか。
空調設備の更新は、2~3年前から検討していました。以前使用していた空調設備は、冷温水発生機のメーカーが部品の供給を終了していたため、大きな故障が発生すると、そのまま全館の空調が止まったままになる恐れがありました。装置の老朽化で、冷房効率も悪化していました。
設備更新の必要性は強く感じていたものの、予算確保の目処が立たず先送りにしていた折、ダイキンエアテクノが開催する省エネセミナーに招待され、参加しました。ダイキンエアテクノとは約20年前から付き合いがあり、当医療法人のさまざまな施設で、空調設備の保守や更新を依頼していました。
セミナーの会場で、空調設備の更新予算の確保についてダイキンエアテクノの担当者に相談したところ、建物の省エネ改修の一環として空調設備の更新を実施することにより、国の補助金を活用する提案がありました。
さっそくダイキンエアテクノに省エネ改修計画を策定してもらい、補助金の申請書類の作成と提出まで代行してもらったところ、審査を通過して補助金が下りることが決まりました。補助金が下りたことで予算確保の問題が解決し、懸案だった空調設備の更新に着手しました。
4.改修コストを抑えながら、エネルギー消費量とランニングコストを削減
ダイキンエアテクノが策定した省エネ改修計画は、どのようなものでしたか。
ダイキンエアテクノは、既存の設備を有効活用することで、改修コストを抑えた省エネ改修計画を立ててくれました。
今回の省エネ改修で活かした既存設備は、1階の冷温水配管とファンコイルです。この施設の1階は、天井がドーム型の装飾的な造りになっているため、天井裏の配管やファンコイルを交換すると工事費が高額になることが見込まれました。また、1階の冷温水配管は、1年前に結露対策で改修したばかりのこともあり、交換のタイミングはまだ先であると考えられました。こうした状況を踏まえ、ダイキンエアテクノは、1階部分については既存の冷温水配管とファンコイルを活かし、空冷ヒートポンプチラーで冷水を発生させるシステムを提案してくれました。老朽化で効率が低下した冷温水発生機を、最新の高効率ヒートポンプチラーに交換することにより、熱源機効率を冷房COP換算で66%高める計画でした。
また、建物南側の窓ガラスに赤外線を90%カットする日射調整フィルムを貼ることで、建物自体の省エネ性を向上する提案もしてくれました。
日射調整フィルムの効果は、事前に体感させてもらいました。日射調整フィルムを貼ったガラス板と貼っていないガラス板を用意し、それぞれのガラス板ごしに電球に手をかざしたところ、伝わってくる熱の量に明らかに差があり、フィルムの効果を実感できました。
既存設備を活かしてコストを抑えた改修
改 修 前 |
全館 | ガス焚吸収式冷温水発生機 +ファンコイル 機器能力 528.0kw 冷房COP 0.83 暖房COP 0.74 |
改 修 後 |
2~4階 | ビル用マルチエアコン 機器能力 417.3kw 冷房COP 1.40 暖房COP 1.58 |
1階 |
空冷ヒートポンプチラー |
|
建物 南側 窓ガラス |
赤外線を90%カットする日射調整フィルムを貼り付け |
5.受電設備の入れ替えに伴う停電対策も万全だった
工事にあたり、ダイキンエアテクノに要望したことはありますか。
工事中も、できるだけ入所者の皆様の生活リズムが変わらずに済むように要望しました。また、当然のこととして、床に置かれた工事資材やケーブルで利用者がつまずいたり、工事で発生した塵で利用者が滑って転倒したりすることがないようにも要望しました。
ダイキンエアテクノは、要望にどう応えましたか。
まず、居室の工事スケジュールを、入所者の移動スケジュールまで含めて、入念に計画してくれました。工事中のフロアの方々が日中過ごすスペースを1階食堂に作り、工事当日は、そのフロアに居住する約30名の方々に朝10時ごろから1時間かけて食堂まで移動していただき、夕方4時頃からまた1時間かけて居室に戻っていただく、という形で、各フロアの居室の工事をスムーズに完了できました。
急なスケジュール変更にも、柔軟に対応していただきました。たとえば、工事当日に体調を崩し、移動を控えた方がよい方が出た場合は、その方の居室の工事日を後日に変更していただけました。行事で食堂を使うため、居室フロアの工事を休む日も設けていただきました。
空調をガス焚きの吸収式からヒートポンプ式に変更するのに伴い、受電設備の容量を上げるため、日中およそ7時間の停電が必要な日があったのですが、ダイキンエアテクノは、停電中も入所者の生活に支障が出ないよう、万全の計画を立ててくれました。停電中の電力は、非常用発電機で確保してくれました。非常用発電機の容量を決めるにあたっては、停電中も必要になる装置とその消費電力量を、綿密に調査してくれました。停電中も必要になる装置としては、照明、揚水ポンプ、2基あるエレベーターの1基、誤嚥対策用の吸引器、褥瘡防止用のエアマット、医薬品用の冷蔵庫などがありました。
館内の養生、資材の整頓、工事後の清掃なども入念に行っていただいたおかげで、工事による転倒事故などは発生しませんでした。
入所者のみなさんから見ると「言われるままに部屋を移動していたら、いつのまにか終わっていた」と思えるほど、スムーズな工事だったと思います。
6.空調設備の更新を検討している医療・介護施設の方へのアドバイス
空調設備の更新を検討している医療・介護施設の方に、何かアドバイスがあればお願いします。
医療・介護施設の工事では、施設利用者の方にできるだけ迷惑をかけずに工事を完了できるように、きめ細かい計画を立ててくれる施工会社を選ぶことが大事だと思います。また、入念に立てた計画も、実際にはその場その場で様々な変更が必要になってきます。こうした変更にも、柔軟に対応してくれる施工会社を見極めることも大事だと思います。
最後に今後の抱負と、ダイキンエアテクノへの期待があればお聞かせください。
医療法人宏友会では、医療や介護をめぐる状況や制度が時代とともに変化していく中、今後も時代ごとに最適の医療・介護のあり方を模索し、提供してまいります。ダイキンエアテクノにおかれましては、引き続き空調設備の設置・保守・更新で当法人の事業をサポートしていただけるようお願い申し上げます。
ダイキンエアテクノ営業担当より
医療法人宏友会のみなさま、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。改修コストを抑えて、快適性の高い空調設備に更新できたことを、私も嬉しく思っております。今後もダイキンエアテクノをよろしくお願いいたします。
(ダイキンエアテクノ株式会社 中部支店 営業部 窪田 誠 )
今回の工事の概況
建物 : 老人保健施設(鉄筋コンクリート造4階建て、延べ床面積3,952m2)
工事内容 : 建物省エネ改修
工期 : 2011年10月~11月
※ 取材日:2012年7月